安全を確保しながら社員と芸人・作家のコラボレーションを後押し
日本を代表するエンターテイメント企業、吉本興業。その舞台は社員だけでなく、多くの作家や芸人といった外部のスタッフが協力して作り上げているが、情報システム部門にとってはこうした「業務委託先」が持ち込むデバイスを従業員用ネットワークと分けて管理し、許可されていない端末の接続を防ぐことが必須の課題だ。この仕組みを実現しているのがソフトクリエイトの不正端末検知システム「L2Blocker」だ。
課題・背景
一般的な企業とはやや異なる吉本興業グループのネットワーク事情
100年以上の歴史を持ち、多数のお笑い芸人や芸能人のマネージメントや演芸の興行、テレビやラジオ番組の制作など、幅広いエンターテイメント作りに携わる吉本興業。大阪の本店、東京の本部に加え、全国の主要な都市に劇場を構え、人々に笑いを届けている。
この吉本興業グループの情報システムを担っているのが、株式会社よしもとアドミニストレーションの情報システム本部だ。
ただし同グループのネットワークには、一般的な企業とはやや異なる事情がある。
導入ポイント
・機械には過酷な環境でも故障なく、許可されていない持ち込み端末を確実に検出
・スマートデバイスも含め、増加し続ける端末の管理を従来と変わらぬ人員で実現
お笑い作りの仲間でも、情報システム的には「部外者」
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「お笑い」を作り出していくには、吉本興業グループの社員だけではなく、多数の外部スタッフの力が必要だ。芸人はもちろん、作家やさまざまな演出に携わる人々がアイデアを出し合い、一つの「舞台」を作り上げていく。その過程では、メールはもちろん、台本データなどもやり取りして練り上げていくことになる。
芸人も作家もエンターテイメントを作り上げていくという意味では同じ「仲間」。しかし情報システム的に見れば、こうした人々はあくまで「業務委託先」だ。コンプライアンスの観点からも、こうしたスタッフが利用する機器やネットワークは、従業員が利用するものとは区別して扱わなければならない。
その上吉本興業グループには、「新し物好き」という遺伝子もあるという。「吉本興業グループは遊びを提供し、それをお金にしている会社です。遊んだことがないもので仕事を作り出すことはできません。ですから、皆新しいものにはどん欲で、例えばiPadの発売初日はもう実機を持ってきて、『これ、何かに使えないかな』と相談してくるほどです。そうした社員、つまりわれわれにとっての顧客に対して、どうサービスを提供し、かつセキュリティを確保するかが課題でした」と、株式会社よしもとアドミニストレーション 情報システム本部 本部長 加藤到氏は語る。
もう一つ考慮しなければいけない要因があった。スマートフォンやタブレットといったスマートデバイスの扱いだ。同社グループでは、より柔軟で効率的な働き方を支援するという意味から、届出制でBYODを許可することとした。こうなると「なおのこと、どの機器に接続を許可し、どの機器は接続させないかの管理が必要になりました」(加藤氏)。
株式会社よしもとアドミニストレーション 加藤氏
実は過酷な稼動環境、多発する故障が情報システム本部の負担に
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よしもとアドミニストレーションではこうした事情を背景に、登録されている端末に対してきちんと接続サービスを提供し、一方で登録されていない持ち込み機器の接続を確実に防ぐ仕組み作りに取り組んでいた。
しかし、当時採用していた機器には故障が多く、運用負荷が高いことが課題だった。
実は、吉本興業の東京本部オフィスはかつて小学校だった建物を改装して利用している。「中庭に面していると言えば聞こえはいいけれど、夏は暑く、冬は寒く、台風のときは風が吹きさらしとなるような環境です。劇場も、楽屋側にはいろんな道具が雑多に置かれており、機械にとってあまりいい環境とは言えません」(加藤氏)。
そうした環境で運用していると次々故障が発生し、その度に情報システム本部は対応に追われたという。特に、地方拠点や劇場で故障が発生したときは大変だった。代替機を手配し、現物を持って拠点に足を運ばねばならない上、その間ネットワークが利用できない従業員のサポートが必要になる。「端末のIPアドレス設定を変更してもらう作業を電話で指示するというヘルプデスク作業に、三人ほどが半日は張り付きになります。つまり、1.5人日の労力を割かねばならず、この負担が大きくのしかかっていました」(加藤氏)。
同一の人員で倍以上に増えたPCやスマートデバイスの管理を実現
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こうした理由から類似の機器を探す中で目をつけたのが、ソフトクリエイトの「L2Blocker」だった。まずHDDという可動部を持たないため、故障が少ない。しかも筐体がコンパクトで設置場所を問わない上、コストパフォーマンスにも優れていた。
さらに、「ソフトクリエイトの営業の方のレスポンスが極めて良かったことも決定のポイントになりました。私どもの会社はスピードを重視しており、何らかの話が上がった時というのは、すなわちもうスタートを切るタイミングなんです。『見積もりに一週間かかります、納品に一ヶ月かかります』というのは、私どもの仕事のリズムではありません」と加藤氏。ソフトクリエイトのスピーディーな対応には満足しているという。
こうして2012年10月から、北海道から沖縄まで広がる吉本興業グループの拠点、15カ所に25台のL2Blockerセンサーを、ほぼ1ヶ月で順次導入していった。今では約1000台のPCと、それを上回る約1100台のスマートデバイスの接続を管理している。新たに端末を持ち込みたい場合は、管理画面で登録するだけですぐ反映される上、Apple製品が備えるキーチェーン機能によって、許可したiPhone向けのWi-Fi設定を、許可していないMac端末と同期させてしまうといった接続もブロックできている。
何より、導入以来今までに故障が発生したのはわずか一台で、ほとんどサポートを受ける必要なく運用できていることに大きなメリットを感じているという。「おかげで、過去は年に4回ほど発生していた出張が減りました。L2Blockerの導入以降、スマートデバイスも含めると管理すべき端末はほぼ倍、2007年に比べれば3倍に増えているのですが、それを同じ数の人員で管理できています」(加藤氏)。
働く意欲を後押するIT環境整備にリソースを
「L2Blockerの導入満足度は99%」という加藤氏。
近々、管理サーバ機能を担う「L2 Blocker Manager」も、ソフトクリエイトが提供するクラウドサービスに移行する予定だ。
これによって生まれた余力は、自分たちの顧客である社員へのサポートやサービス品質のさらなる向上に注いでいきたいという。
BYODにせよ、今後取り組むデスクトップ仮想化にせよ、「働く人、一人一人の『仕事を前に進めたい』という気持ちを、うまく実現できるように後押しする環境を整えていきたいですね」という加藤氏。
これからもよしもとアドミニストレーションの挑戦は続く。